職業紹介の労働条件等明示書の雛形と書き方【明示事項一覧】

ROSTER 編集部/公開:

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職業紹介事業者が求職者に渡す労働条件等明示書について、職業安定法施行規則が定める明示事項の一覧(2024年4月に追加された変更の範囲・更新の基準を含む)、架空の求人で書いた雛形、項目ごとの書き方、渡す時期と方法、条件が変わったときの扱い、守らない場合の処分を、法令と業務運営要領をもとに整理しました。

この記事のポイント

  • 求人を紹介するときは、業務の内容や賃金などの労働条件を書面で求職者に示します。
  • 示す事項は施行規則で決まっており、2024年4月から変更の範囲と更新の基準が加わりました。
  • 渡す時期は、原則として求職者と最初にやり取りする時点までです。

職業紹介事業者は、求人を紹介するとき、求職者に業務の内容・賃金・労働時間などの労働条件を明示します(職業安定法第5条の3第1項)。書面などで示さなければならない事項は施行規則で決まっていて、方法は書面の交付が原則です。本人が希望すれば、FAX・メール・SNSのメッセージでも構いません。渡す時期は、原則として求職者と最初にやり取りする時点までです。

迷いやすいのは、「会社が入社時に出す労働条件通知書と何が違うのか」「いつ渡せば間に合うのか」「内定前に条件が変わったら誰が何をするのか」の3点です。この記事では、架空の事業所Aが架空の株式会社Bの求人を紹介する場面で、明示書を1枚書き上げます。

法令は職業安定法(以下「法」)・同施行規則(以下「規則」。e-Gov 法令検索の現行版)、運用は厚生労働省の職業紹介事業の業務運営要領(令和8年10月版。以下「要領」)の第9の2を下敷きにしました。2026年11月6日に読み直しています。

明示する事項の一覧

明示事項は規則第4条の2第3項に並んでいます。号の数え方で11項目です。2024年4月1日施行の改正で、業務と就業場所の「変更の範囲」と、有期契約の更新の基準が加わりました。

規則の号明示する事項対象
1号従事すべき業務の内容(変更の範囲を含む)すべての求人
2号労働契約の期間すべての求人
2号の2試用期間すべての求人
2号の3有期契約を更新する場合の基準(通算期間・更新回数の上限を含む)更新がありうる有期契約だけ
3号就業の場所(変更の範囲を含む)すべての求人
4号始業・終業の時刻、所定時間外の労働の有無、休憩時間、休日すべての求人
5号賃金の額(賞与・臨時の賃金などを除く)すべての求人
6号健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の適用すべての求人
7号雇用しようとする者の氏名または名称すべての求人
8号派遣労働者として雇用しようとする旨派遣で雇う求人だけ
9号就業の場所での受動喫煙を防ぐ措置すべての求人

古い雛形を使い回していると、ここが抜けます。

会社が雇い入れのときに出す労働条件通知書(労働基準法第15条)とは、根拠も項目も別です。たとえば退職に関する事項は、通知書には要りますが、規則の11項目には入っていません。2024年4月に労働基準法の側で加わった無期転換の申込み機会の明示も、職業紹介の明示事項ではありません。逆に、受動喫煙の措置や雇い主の名称は職業紹介の明示に固有の項目です。紹介会社の明示書は、入社前に「どこの会社の、どんな条件の求人か」を伝える書類です。

書く材料は求人者(求人を出した会社)からもらいます。求人者にも、求人の申込みのときに同じ事項を紹介会社へ書面などで示す義務があります(法第5条の3第2項)。求人申込書を11項目の欄立てにしておくと、明示書にそのまま写せます。

雛形(架空の事業所Aの記入例)

法令に決まった様式はありません。規則が求めるのは「明示事項が明らかとなる」書面などで渡すことだけです。下の雛形は、事業所Aが株式会社Bの法人営業の求人を、求職者Cさんに紹介する場面で書いたものです。

労働条件等明示書

C 様  明示日:2026年11月6日
職業紹介事業者:事業所A(有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-000000)

  1. 雇用しようとする者:株式会社B(東京都千代田区)
  2. 業務の内容:食品メーカー・飲食店向けの法人営業(既存顧客約40社の訪問と受発注の管理)。変更の範囲:会社の定める営業・営業事務の業務
  3. 労働契約の期間:期間の定めなし
  4. 試用期間:あり(3か月)。期間中の労働条件は本採用後と同じ
  5. 就業の場所:本社(東京都千代田区)。変更の範囲:本社および横浜営業所
  6. 労働時間:9時00分〜18時00分(休憩60分)。所定時間外の労働:あり(月平均15時間)
  7. 休日:土曜・日曜・祝日、年末年始(年間休日125日)
  8. 賃金:月給300,000円(基本給255,000円、固定残業代45,000円=時間外労働20時間分。20時間を超えた分は追加で支払う)。通勤手当は実費(月30,000円まで)。昇給:年1回(4月)
  9. 加入保険:健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険
  10. 受動喫煙を防ぐ措置:屋内原則禁煙(喫煙専用室あり)

この書面は求人の申込みの内容にもとづきます。雇用契約を結ぶときの条件は、この内容と異なる場合があります。条件が変わる場合は、株式会社Bから変更点を示した書面でお知らせします。

許可番号と明示日は法令の明示事項ではありません。誰がいつ示したかを後から確かめられるように入れています。有期の求人なら、3の下に更新の基準を足します。派遣で雇う求人なら、その旨を1行足します。

項目ごとの書き方

業務と就業場所は「直後」と「変更の範囲」を分ける

雇い入れ直後の業務・場所と、契約期間中に変わりうる範囲を並べて書きます。範囲には今後の見込みも含めます。見込みは事業の方針変更などを踏まえたもので足り、具体的に想定していないものまで入れる必要はありません(要領 第9の2(2)ロ)。有期契約なら、その契約の期間中の範囲だけです。

ハローワークの案内では、業務の内容を変える予定がなければ「変更範囲:変更なし」と書きます。限定がない場合は「会社の定める○○」でもよいとしつつ、トラブルを防ぐため、できるだけ範囲をはっきりさせることを勧めています。業務の内容は、職場環境も含めて具体的に書くよう配慮することとされています(要領 第9の2(2)ニ(ロ))。「一般事務全般」のような一言で済ませず、主な作業を2〜3個挙げます。

労働時間と賃金は、制度の名前まで書く

労働時間は、始業・終業の時刻、所定時間外の労働(決められた時間を超える残業)の有無、休憩、休日を書きます。裁量労働制なら制度の種類と何時間働いたとみなすかを、高度プロフェッショナル制度の対象になりうる求人ならその旨を示します(要領 第9の2(2)イ(ロ)・(4))。所定時間外の労働が月45時間・年360時間を超える書き方になっていたら、求人者に労使協定(いわゆる36協定)を見せてもらうなどして、法令違反がないかを確かめます。

賃金は、月給・日給・時給の別、基本給、決まって払う手当、通勤手当、昇給を書きます。固定残業代があるときは、何時間分でいくらか、それを除いた基本給、超えた分を追加で払うことの3つを必ず書きます(要領 第9の2(2)イ(ハ))。雛形の8がその形です。

試用期間・有期契約・受動喫煙

試用期間は、有無と期間を書きます。試用期間中と本採用後で条件が違うなら、両方を示します(規則第4条の2第6項)。有期契約が実質的に試用期間の役割を持つ場合も、その有期契約の条件を示します。

更新の基準は、「総合的に判断する」ではなく「勤務成績、態度、能力により判断する」のように具体的に書くのが望ましいとされています(要領 第9の2(2)ロ)。更新しない契約なら書く必要はありません。上限を設けていないときに「上限なし」と書く必要もありません。

受動喫煙の措置は、実際に働く場所の状況を「屋内禁煙」「屋内原則禁煙(喫煙専用室あり)」のように書きます。要領には、施設の種類ごとの書き方の例が載っています(要領 第9の2(7))。

いつ・どうやって渡すか

  • 時期:原則として、求職者と最初に接触する時点までです。面接・メール・電話などで意思のやり取りが始まる時点を指し、面接の日程調整の連絡は含みません(要領 第9の2(2)ハ)
  • 一部を後で示すとき:やむを得ず一部を別に示すなら、そのことも併せて伝えます(「詳細は面談でお伝えします」など)
  • 方法:手渡しか郵送が原則です。FAX・メール・SNSのメッセージは、本人が希望した場合だけ使えます(規則第4条の2第4項)
  • 電子で送る条件:本人が印刷して書面にできる形であることです。本人には、希望する方式(メールかSNSか、添付ファイルの形式など)を伝えてもらいます
  • 例外:紹介を急ぐために書面などが間に合わず、明示事項を先に口頭などで全部伝えた場合は、書面などでなくても違反になりません(規則第4条の2第4項ただし書)

SNSのメッセージは、サービスによって保存期間が限られます。送ったら、内容を確かめて保管するよう本人に一言添えます。消えてしまったと言われたら、送り直すのが望ましいとされています(要領 第9の2(1))。

実務では、本人がメールでの受け取りを希望していれば、紹介の打診をするメールに明示書のPDFを付けることで、時期と方法の両方を一度に満たせます。希望を確かめたことも記録に残します。明示した日・方法・どの版を渡したかは、求職者ごとの記録に残しておくと、後で問い合わせがあったときに答えられます。

内定前に条件が変わったとき

紹介会社が最初に示した条件を、求人者が契約を結ぶにあたって変える場合は、求人者が求職者に変更点を明示します(法第5条の3第3項)。対象は、変更・削除・追加と「特定」です。特定とは、「月給20万円〜25万円」と示していたものを「20万円」に決めるような場合を指します(規則第4条の2第1項、要領 第9の2(3)イ)。

変更点の示し方は、最初の明示と変更後を見比べられる書面が望ましいとされています。労働条件通知書の該当箇所に下線を引く・色を付ける・注記する方法も認められています(要領 第9の2(3)ロ)。最初の明示はそのまま契約の内容になることが期待されており、安易に変えてはいけません(要領 第9の2(3)ニ)。学校卒業見込者等(新卒の学生など)に対しては、最初の明示を変える・削る・足すこと自体が不適切とされています。最初に別途示すと伝えていた事項を足す場合は除きます(要領 第9の2(3)ホ)。

紹介会社の側は、明示した条件が契約時に変わる可能性があればその旨を併せて伝え、実際に変わったら速やかに求職者へ知らせます(要領 第9の2(2)ニ(ハ))。求人者から「年収を下げて内定を出したい」と連絡があったら、変更点を書面で示すよう依頼し、求人票の修正や出し直しも頼みます。

守らないとどうなるか

明示をしなかったこと自体に罰則(拘禁刑・罰金)を定めた条文はありません。ただし、法令に違反した職業紹介事業者は、改善命令・事業停止命令・許可の取消しの対象になります(法第48条の3第1項、法第32条の9、要領 第12の2(1))。改善命令に従わない場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(法第65条第8号)。

虚偽の条件を示して紹介した場合は別です。6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(法第65条第9号)。求人票の条件を盛って伝えると、明示の不備では済まず、刑事罰の対象になりえます。

手数料などの明示とは別の義務

求人・求職の申込みを受けたら、取扱職種の範囲、手数料、苦情の処理、個人情報の扱い、返戻金制度も明示します(法第32条の13、規則第24条の5)。こちらは求人ごとではなく事業者としての案内で、申込みを受けた後、速やかに行います。労働条件等明示書とは別の書類として用意します。メールでの受け取りを希望した人には、登録の受付を知らせるメールに付けると渡し忘れません。

よくある質問

求人票をそのまま渡せば明示になりますか

様式は決まっていないので、該当する項目がすべて書かれていて、書面などで渡すなら足ります。企業向けの求人票には、受動喫煙や変更の範囲の欄が無いことがあります。渡す前に、一覧表と1行ずつ照らし合わせてください。

電話で条件を伝えたので、書面は要りませんか

要ります。口頭で伝えてよいのは、紹介を急ぐ事情があって書面などが間に合わない場合の例外だけです。

有期で雇って、後で正社員にする求人はどう書きますか

最初の有期契約の条件を明示します(要領 第9の2(6))。本人が正社員になった後の条件も知りたいときは、「法に基づく明示ではない」「予定であって変わりうる」と書いた別の書面で示します。

参考にした資料

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