人材紹介の返金規定の雛形と計算例【公開規定25件の傾向つき】

ROSTER 編集部/公開:

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返金規定 / 手数料 / 法定業務

有料職業紹介事業者が求人企業との契約に入れる返金規定(返戻金制度)について、法令で決まっていることと契約で決めること、人材サービス総合サイトで公開されている規定25件の傾向、そのまま直して使える条項の雛形、架空の事業所での計算例、会社都合・試用期間・入社前辞退・入金前の退職・消費税の扱いを、職業安定法と業務運営要領をもとに整理しました。

この記事のポイント

  • 返戻金制度を設けるかどうか、何か月で何%を返すかは、法令ではなく契約で決めます。
  • 制度を設けたら、求人者と求職者への明示、自社での掲示、人材サービス総合サイトへの掲載が要ります。
  • 公開規定25件のうち、返金の期間が6か月以上続くものは9件でした。

紹介で入社した人が早く辞めたとき、紹介手数料をいくら返すかは、法令ではなく求人企業との契約で決めます。厚生労働省の業務運営要領も、返戻金制度は「設けることが望ましい」と書くにとどめ、義務にはしていません。制度を設けたら、その内容を求人者・求職者に明示し、人材サービス総合サイトにも載せます。

迷いやすいのは、「期間をどう数えるか」「会社都合や試用期間中の解雇をどう扱うか」「消費税込みで返すのか」の3点です。この記事では、条項の雛形を示したうえで、架空の事業所Aの1件を通しで計算します。

法令まわりは、職業安定法・同施行規則(以下「規則」)・消費税法(e-Gov 法令検索の現行版)と、厚生労働省の業務運営要領(令和8年10月版。以下「要領」)を下敷きにしました。2026年10月21日に読み直しています。

法令で決まっていること・契約で決めること

項目法令の定め根拠
制度を設けるか義務ではなく、設けることが望ましい要領 第9の5(4)ロ
返す期間・率・対象定めはない。契約で決める―
求人者・求職者への明示申込みを受けた後、速やかに書面で(相手が希望すればFAX・メールも可)法第32条の13、規則第24条の5第1項第2号・第2項
掲示・自社サイト返戻金制度を書いた書面を掲示などで情報提供規則第24条の5第4項
人材サービス総合サイト返戻金制度に関する事項を、その時点の内容で掲載法第32条の16第3項、規則第24条の8第3項第5号
事業報告書(様式第8号)返戻金制度の有無と、有る場合はその概要様式第8号 記載要領11

規則の定義では、紹介した人が早く辞めたときなどに、雇用主から受け取る手数料の全部か一部を返す制度が返戻金制度です(規則第24条の5第1項第2号)。返金の代わりに別の人を無料で紹介する仕組み(フリーリプレイスメント)も、この定義の「これに準ずる制度」に入りうると読めます。扱いは管轄の労働局で確かめておくと安心です。

明示は、求人者だけでなく求職者にも行います(要領 第9の5(4)ハ)。求職者向けの案内に返金の話が無いと、明示の漏れになります。

公開されている返戻金制度25件の傾向

人材サービス総合サイトには、各事業者が載せた返戻金制度の書面がPDFで公開されています。2026年10月21日に検索で見つかった25件(25事業所分)を読み、項目ごとに数えました。検索で拾えたものだけなので、業界全体の統計ではありません。

項目件数(25件中)
返金の期間が3か月以内で終わる16件(うち60日まで1件)
返金の期間が6か月まで続く8件
返金の期間が12か月まで続く1件
最初の区分の返金率が100%11件
最初の区分の返金率が80%9件
7日以内の区分を別に設けている5件
対象を本人都合の退職・本人の責めによる解雇に限る21件
求人企業の法令違反や労働条件の相違による退職を除く10件
返金の期限を書いている7件
税抜か税込かを書いている1件

最初の区分の残り5件は、90%が2件、50%が2件、66%が1件でした。期間の区切りは1か月・3か月・6か月が多く、率は事業者ごとにばらつきます。「1か月以内」がいつまでかを書いた規定も、消費税の扱いを書いた規定も、それぞれ1件だけでした。後で揉めやすいのはこの2点なので、雛形では明記しています。

なお、規定の中に「契約書で別の定めをする場合がある」と添えたものが10件ありました。公開する規定と個別の契約が違うと、明示した内容と実際が食い違います。個別に変えた企業には、変えた内容をあらためて書面で示しておきます。

返金規定の雛形

甲を求人企業、乙を紹介事業者とした条項の例です。【 】の数字は架空の例で、推奨する率ではありません。この雛形は出発点です。実際の契約は、必要に応じて弁護士に確認してもらってください。

第○条(早期退職時の紹介手数料の返還)

1 乙の紹介により甲に雇用された者(以下「採用者」という。)が、次の各号の期間内に退職した場合、乙は、甲から受領した紹介手数料の額(消費税等を除く。)に当該各号の割合を乗じた額(1円未満切り捨て)に、消費税等相当額を加えて甲に返還する。
(1) 入社日から1か月以内 【100】%
(2) 1か月を超え3か月以内 【50】%
(3) 3か月を超え6か月以内 【20】%

2 前項の各期間は入社日を1日目として数え、最後の月で入社日と同じ日付となる日の前日に終わるものとする(同じ日付がない月は、その月の末日に終わる)。退職日は、雇用契約が終了した日とする。

3 次の各号のいずれかに当たる場合、乙は返還しない。
(1) 甲の都合による解雇、または退職勧奨による退職
(2) 労働条件が採用時に示した内容と著しく異なるなど、甲の責めに帰すべき事由による退職
(3) 採用者の死亡その他やむを得ない事由による雇用契約の終了

4 甲は、採用者の退職を知った日から【14】日以内に、退職日と退職の理由を書面または電子メールで乙に通知する。

5 乙は、前項の通知を受けた日の属する月の翌月末日までに、甲の指定する口座へ振り込んで返還する。振込手数料は乙の負担とする。

6 紹介手数料の支払前に第1項の退職があった場合、甲は、紹介手数料から返還額を差し引いた額を支払う。

7 甲と乙は、合意により、返還に代えて別の候補者を紹介することができる。この紹介について、乙は紹介手数料を受け取らない。

なぜこう書くか。

  • 第2項で「1か月」の終わりを決めておく。民法では、月で定めた期間は応当日の前日に満了する(民法第143条第2項)。初日を数えるか(同法第140条)で読み方が割れないよう、入社日を1日目と書く
  • 第1項は税抜の額に率を掛け、最後に消費税等を足す。返還インボイスに書く税抜の額と消費税の額が、そのまま求まる
  • 第3項の除外事由は、公開規定でも多かった型。試用期間中の本採用拒否をどちらに入れるかは、次の節で決める
  • 第4項の通知期限を過ぎたら返さない、とまで書くかは任意。書くなら求人企業の不利益になる条件なので、契約書面で明確に示す

計算例(架空の事業所A)

架空の事業所Aが、B社(架空)に候補者を紹介しました。理論年収は500万円、手数料率は30%です。手数料は1,500,000円(税抜)、消費税等150,000円で、請求額は1,650,000円です。入社日は2027年7月1日で、返金規定は上の雛形の【 】の率を使います。

退職日入社日から区分返還額(税抜)返還額(税込)
2027年7月31日31日目1か月以内1,500,000円1,650,000円
2027年9月8日70日目3か月以内750,000円825,000円
2027年12月31日184日目6か月以内300,000円330,000円
2028年1月1日185日目対象外0円0円

7月1日に入社した人なら、1か月の区分は7月31日、6か月の区分は12月31日で終わります。6か月の長さは入社日によって181〜184日と変わり、7月1日入社は最も長い184日、9月1日入社は181日です(うるう年でない年)。日数で区分を書く場合は、最後の区分を184日目まで取らないと、入社日によっては6か月に届きません。

9月8日に辞めた例で、B社がまだ手数料を払っていなかった場合は、第6項により1,650,000円から825,000円を差し引いた825,000円を請求します。

迷いやすい場面の扱い

会社都合と自己都合の区別は、退職届や離職の理由を求人企業に確かめてから判断します。形は自己都合でも、実際には労働条件の相違が原因という場合があるため、公開規定の10件はそれを除外事由に挙げていました。

試用期間中の本採用拒否も、使用者が労働契約を終わらせる点で解雇に当たると一般に解されています。労働基準法も、試用期間中の者を14日を超えて使った後は、解雇予告の規定を適用するとしています(同法第21条第4号)。「本人の責めによる解雇」に本採用拒否を含めるのか、契約で一言決めておきます。

入社前の辞退は、就職していないので返戻金制度の対象ではありません。手数料が発生するかは手数料表と契約の定めによります。上限制手数料は「支払われた賃金額」が基準なので(規則別表)、賃金が払われていなければ紹介手数料は生じません。辞退時にキャンセル料を求めるなら、要領が求める違約金等の明示の対象になります(要領 第9の5(8)ニ)。

上限制手数料(支払われた賃金の11%が上限の方式)では、早く辞めればその分だけ上限額も小さくなります(規則別表)。返金規定の設計が金額に強く効くのは、届出制手数料(届け出た手数料表に基づく方式)で、予定年収を基準に先に受け取る場合です。手数料表そのものに返金の欄は無く、返戻金制度は別の書面として扱われます(規則第24条の5第4項)。返金規定を変えるとき届出が要るかは、管轄の労働局に問い合わせてください。

消費税は、返金が「売上げに係る対価の返還等」に当たります。支払前の請求額を減らす場合も同じです(消費税法第38条第1項)。適格請求書発行事業者は、相手が課税事業者なら適格返還請求書(返還インボイス)を交付します(同法第57条の4第3項)。税込1万円未満の返還は交付が免除されます(消費税法施行令第70条の9第3項第2号)。

明示・掲示・掲載の4か所をそろえる

制度を作ったら、次の4か所に同じ内容を出します。

  1. 求人者・求職者への明示。申込みを受けた後、速やかに書面で。相手が希望すればFAXかメールでもよい(規則第24条の5第2項、第17条の7第2項)
  2. 事業所内の掲示か自社サイト。自社サイトで行う場合は、人材サービス総合サイトとは別に行う(規則第24条の5第4項、要領 第9の8(3))
  3. 人材サービス総合サイト。手数料と返戻金制度は「その時点における情報」を載せる(規則第24条の8第3項、要領 第9の6(1))
  4. 事業報告書(様式第8号)の8欄。有無に○を付け、有りなら概要を書く。書ききれなければ別紙でよいと大阪労働局は案内しています

4か所のうち1か所だけ直すと、求人企業が見る内容が食い違います。規定を変えた日に、4か所を同時に直すと決めておきます。

返金した人数で離職者数を数える方法

人材サービス総合サイトには、無期雇用で就職した人のうち、6か月以内に離職した人の数も載せます(解雇による離職を除く。規則第24条の8第3項第2号)。数えるには、原則として雇用主への調査が要ります(同条第5項)。

ただし返戻金制度を設けている事業者は、手数料を免除する事由に当たった人の数で数えれば、調査をしなくてよいとされています(同条第6項)。事業報告書でも、離職者数に代えて「返金した人数」を報告できます(要領 第7の7(1))。

この方法を使うなら、返金の期間が就職後6か月を覆っている必要があります。期間が3か月で終わると、4〜6か月目の離職が数えられないからです。法令の文言に書かれた条件ではありませんが、数の意味を考えると欠かせません。公開規定25件のうち、6か月以上を覆うものは9件でした。

よくある質問

Q. 返戻金制度を設けない場合、何か届け出る必要はありますか。 A. 設けないことの届出はありません。事業報告書の8欄は「無」に○を付けます。明示や人材サービス総合サイトで「制度なし」と示すかは法令に明文がないので、管轄の労働局の案内に従います。

Q. 企業ごとに返金の率を変えてもよいですか。 A. 契約で決める事項なので、企業ごとに変えること自体は妨げられていません。ただ届出制では、手数料表に基づく手数料が特定の者への不当な差別的取扱いに当たると、変更命令の対象になりえます(法第32条の3第4項第1号)。変えた内容は、その企業への明示書面にも反映します。

Q. 代わりの人を無料で紹介した場合、返金した人数に数えますか。 A. 規則の文言は「手数料を免除する事由に該当したもの」で、要領は「返金した人数」と書いています。代替紹介をした人を含めるかは読み方が分かれるため、管轄の労働局に確認してから数え方を決めてください。

Q. 返金の対象に「本人の責めによる解雇」を含めると、数が合わなくなりませんか。 A. 合わないことがあります。離職者数は解雇による離職を除いて数えますが、返金の対象には解雇が入っているからです。返金した人数で数える年度は、解雇で返金した人を含めてよいか、事前に労働局へ聞いておきます。

参考にした資料

ROSTER では、返金規定を組織全体の既定と企業ごとの上書きで設定できます。区分は入社日を1日目とする日数で決め、既定は1〜30日目100%・31〜60日目80%・61〜90日目50%・91〜184日目20%です。日数で区切るため、「1か月以内」のように月で決めた契約とは、月の長さによって数日ずれることがあります。離職日を入れると、経過日数・返金率・返金額(税抜・1円未満切り捨て)がその場で出ます。規定は成約した時点のものに固定され、後から変えても過去の成約の額は動きません。返金か代替紹介かも選べます。消費税分の計算と返還インボイスの発行には対応していないため、会計ソフトなどで行ってください。様式第8号の離職欄を返金した人数で数える方法は、返金規定が184日目まで続くときに選べます(事業報告書の出力は有料プラン)。返金計算そのものは全プランで使えます。プランの違いは料金ページで確かめられます。

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